本研究は、精神障害者の地域生活支援に関わる専門職の中でも、特に精神障害者社会復帰施設専任職員に着目し、専任職員の基本的属性を含む現状、および職務分析と研修制度へのニーズ調査を行ない、その実情を明らかにする。それらの結果から検討される研修方法およびカリキュラム試案の開発を目的としている。 本年度は、精神障害者社会復帰施設専任職員の実態を把握するために、主として精神障害者地域生活支援システムにおける専門職研修に関する概念枠組みの検討および面接調査を実施した。 面接調査では、スタッフ研修に関心のある4施設を対象に、精神保健福祉士、作業療法士、および専任職員に対して面接による聞き取り調査を実施した。また地域ブロック精神障害者社会復帰施設会議に参加し、参加5施設の施設長にグループインタヴューを実施した。調査結果としては、制度としては「専任職員」に対しては、資格の有無、臨床経験を問うものはないが、利用者へのサービスを考え、専任職員として精神保健福祉士有資格者もしくは併設されている精神病院の作業療法士助手経験者、準看護師を配置しているところが多く見られた。しかしながら、利用者へのケアに関しては経験等から対応可能であるものの、本来の施設役割としての社会リハビリテーションおよび職業リハビリテーションの研修経験はなく職務に就き、現状においても研修の機会はほとんどないことが明らかになった。したがって、研修へのニーズおよび情報交換、交流への要望は多いことも示される結果となった。これらの結果をもとに、次年度実施予定の全国精神障害者社会復帰施設専任職員へのアンケート調査票の作成をすすめている。 また、わが国の精神障害者地域生活支援専門職研修システムに関しては、先進国であるアメリカのジョブコーチ・リハビリテーションカウンセラーの養成課程および研修制度について検討し、わが国の日本職業リハビリテーション学会の研修委員としての任を担い、わが国の地域生活支援専門職養成研修プログラムについて検討をすすめている。
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