本研究の目的は、障害者入所施設における、職員による利用者に対する情報提供の一形態としての説明場面に分析および考察を加えることにある。 3つの質的調査を行った。第1に利用者の苦情に対する職員のコミュニケーションのあり方に影響を与える要因を探るための、職員へのアンケートおよびインタビュー。第2に職員の説明に対する利用者の理解度を把握するための、利用者集団へのインタビュー。第3に制度説明場面における話し手と聞き手の相互作用に関する参与観察である。 その結果、職員と利用者の間には認識のズレがあり、その背景には職員と利用者のコミュニケーション能力に関する要因だけでなく、入所施設がもつ職員体制や予算等の物理的要因、運営方針や集団規範等の組織的要因等が数多く見られた。 さらに利用者の理解を促進するために、説明者の選択、採用する資料、説明環境の整備のような工夫が試みられており、利用者の動機づけとともに、コミュニケーション仲介者としての第三者の機能に注目することができた。 職員が説明責任を果たすためには、利用者からの(応答責任に基づく)フィードバックは重要である。双方向のコミュニケーションを積み重ねることにより、職員は利用者の生活の質を高めるパートナーとしての位置を獲得することが可能となる。
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