本研究の目的は、ソーシャルワーク過程において、施設職員が利用者支援の一環として、説明・記録・情報の利活用・評価を行ない、その場面ごとに、第三者の関与を得ながら、二者間で福祉情報を共有、生成している現状と課題を明確化することを通し、情報共有論を展開することにある。 研究方法は、障害者福祉施設におけるレジデンシャルソーシャルワークの参与観察や施設職員に対する自由記述式アンケート、そしてフォーカス・グループ・インタビューを複合的に用いた。 得られた知見は、ソーシャルワーク過程のいずれの場面においても、客体に甘んじていた利用者はその主体性を回復し、職員は利用者の主体性を尊重し、各場面への利用者参加を積極的に保障することを前提とした支援を行なうという、両者の意識および行動改革を迫られていることである。 そのためには、利用者の意思決定を支援する職員を、「反省的実践家(reflective practitioner)」と位置づけ、その実践を促進するためにはスーパービジョンが必要であることと、利用者の主体性確立と権利擁護の両者を実現するために、セルフ・アドボカシーの発展とそれに対する適切な支援が重要であることを主張した。このことに関連し、利用者と職員が対話を通して向き合い、互いの福祉情報を共有することを通し、新たな情報を生成、外在化させ、両者がともに主体性をもって、福祉課題の解決や要望の実現に、協働的に関与する「対話型協働的意思決定」が重要であり、その各場面に関与する第三者活動の段階的展開の必要性を提言した。 以上を踏まえ、支援とは、それを求める者と提供する者の相互主体性に基づく、情報共有により実現可能となることを結論づけた。
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