ホームヘルパーとサービス利用者が様々な家事援助の提供場面においてどのような葛藤を抱えているかを解明し解決策を考察するため、本年度は先行研究の整理とインタビュー調査にもとづく事例検討を行つた。 まず先行研究を整理する作業を通じて、本研究の研究目的と関連が強いと思われる三つの研究分野を位置づけることができた。一つめは在宅介護における「消費者主導」に関する研究であり、サービスの利用者にサービス内容や提供手段の決定権をどのように委譲すべきかが検討されている。二つめは在宅福祉サービスの質に関する研究であり、従来の専門職主導のサービスを批判する立場から、利用者のサービス評価基準を解明する作業が進められている。三つめは、社会福祉学の分野で蓄積のある援助関係に関する研究であり、援助者と被援助者との人間関係の捉え方と援助関係の構築過程の解明に向けて様々な研究が行なわれている。これらの先行研究を参考に、(1)利用者がサービスの質の良し悪しをどう定義しているのか、(2)利用者とヘルパーがサービス提供の際に交わすやり取りが、相手に対する定義づけやサービス評価にどのような影響を与えるか等の問題設定を行った。 次にこの問題設定を受けて、担当の介護支援専門員から問題を抱えているケースとして紹介された事例について関係者への聴取調査と事例検討を実施した。その結果、サービス内容の定義にあたって「ビジネスライクなモデル」「慈善奉仕的なモデル」と形容されるようないくつかのモデルがありうること、実際に提供されるサービスの内容に関わらずこの定義モデルが利用者とヘルパーとで食い違えば、両者にとって多大なストレスと葛藤の原因になりうること等が明らかになった。
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