日本社会は平等な社会と言われてきたが、近年では、社会的不平等や、格差の拡大に関する議論も盛んである。また今後の格差の動向や政策への志向に関しては、人々の意識に変化も起こっている。本研究の目的は、人間関係(関係的資源)に着目して多次元的な社会階層構造を解明し、諸資源と、社会意識(とくに社会の変革に関する意識や政治意識)や参加との関連について独自の調査を実施し、国際間、地域間比較が可能なデータを得て、統計分析を行うことである。本年度は、まず前年度に得た独自の社会調査データを分析した他、日本国内の全国調査データであるSSM調査などを分析し、その成果を2003年9月の数理社会学会と11月の日本社会学会にて口頭発表した。 また海外において、独自の社会調査を実施することを企画したが、幸い、韓国の外務省外郭団体である世宗研究所の研究者と、ソウル市内にある檀国大学の研究者の協力を得られることになった。そこで、ソウル市において、1600人を対象に無作為抽出を伴う統計的社会調査を実施した。調査は2003年10月中にほぼ終了した。一部のデータクリーニング作業等を現在行っているが、データファイル作成もほぼ終了した。調査内容は、基礎項目の他、有力者との関係的資源保有や政策への意識、教育政策への意識等である。これにより、多次元的な社会階層や、政策志向、社会意識に関する、国際比較可能な独自のデータを得ることができた。データは、研究者に対して公開予定である。このデータの分析結果の一部を、2004年3月の数理社会学会大会で発表した。予算は調査実施のために主に使用した。 今年度は、調査実施とデータファイル作成を行ったため、学会発表の他には、とくに雑誌論文等はないが、数本を準備中である。次年度はさらに、韓国の地方都市での調査を行う予定で、調査準備を行っている。
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