日本社会は平等な社会と言われてきたが、近年では、社会的不平等や、格差の拡大に関する議論も盛んである。また今後の格差の動向や政策への志向に関しては、人々の意識に変化も起こっている。本研究の目的は、人間関係(関係的資源)に着目して多次元的な社会階層構造を解明し、諸資源と、社会意識(とくに社会の変革に関する意識や政治意識)や参加との関連について独自の調査を実施し、国際間、地域間比較が可能なデータを得て、統計分析を行うことである。本年度は、まず前年度に得たソウル市での社会調査データを分析し、既存の日本3地点(東京、仙台、仙北農村部)での調査結果と比較しつつ、その成果を2004年11月の日本社会学会にて口頭発表した。ソウル時は社会不公平感が高く、生活満足度は低く、平等志向は日本よりも強いことなどが分かった。 また海外において、独自の社会調査を実施することを企画したが、幸い、韓国の外務省外郭団体である世宗研究所の研究者と、韓国大邱市内にある慶北大学の研究者の協力を得られることになった。そこで大邱市において無作為抽出を伴う統計的社会調査を実施した。調査は2004年7月中にほぼ終了し約1000人のデータを得ることができた。一部のデータクリーニング作業等を現在行っているが、データファイル作成もほぼ終了した。調査内容は、基礎項目の他、有力者との関係的資源保有や政策への意識、教育政策への意識等である。これにより、多次元的な社会階層や、政策志向、社会意識に関する、国際比較可能な独自のデータを得ることができた。これまでの日本、ソウル、大邱市でのデータは、研究者に対して公開予定である。予算は調査実施のために主に使用した。 今年度は、調査実施とデータファイル作成を行ったため、学会発表の他には、とくに雑誌論文等はないが、数本を準備中である。
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