研究初年度である平成14年度は、8月と3月に、調査対象地であるメキシコ・ユカタン半島に位置するホルボッシュ島と、本研究に関して協力をいただいているメキシコ国立研究所を訪れた。その際に収集した現地研究者らによる文献研究と現地調査の結果、ホルボッシュ島では、現在、近年の急激な人口増加、観光化、生活スタイルの変化が問題とされていることがわかった。さらに、生活環境・自然環境への影響として、海洋水質の悪化、漁獲量の減少、鳥の減少、海岸侵食、景観の悪化、未舗装道路の水溜り化などの問題が、住民や自治体での聞き取り調査で明らかになった。また、島の環境問題を考える上でのステークホルダーとして複数の組織や人物が同定された。現地では、地域型環境管理を目指す現地NGOによる活動も見られるが、自治体やエヒドと呼ばれる共有地管理組合や他住民との意思疎通が十分でなく、効果的な活動とは言い難い現状にある。一方、地方自治体による環境管理は、より急務とされる教育・福祉問題、経済発展が優先される現状にあり、積極的な施策は見られない。 平成15年8月には、開発と自然環境破壊問題、海洋汚染と一般廃棄物処理問題について、地域住民の意識調査を行い、途上国で環境と生活に関するリスク認知研究を計画している。その結果は、その後の地域利害関係者間のリスク・コミュニケーションに用いるとともに、環境や開発、リスク研究に関する国内外の学会や論文に発表していく予定である。
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