本研究は身体の文化・歴史社会学的手法を非常にミクロな事柄(乳幼児の臀部を中心にみられる青あざの名称変遷)に適用して研究するものである。そして、一方でマクロには日本における人種・民族イメージの変遷をあぶりだそうとするものである。初年度は関西地域での文献収集・および研究会での発表や相談を中心に行った。拠点としたのは調べものは国際日本文化研究センター図書館・京都大学附属図書館(京都府立医科大学は科研費収得以前に調査済み)である。あわせて文献複写依頼も行った。また、研究会は文化社会学研究会、知識社会学研究会(いずれも京都大学文学研究科内)および国際日本文化研究センターの各種共同研究会、および相対研究会(井上章一代表)である。 その中で浮上してきた問いは、東京帝国大学のお雇い外国人ベルツと京都帝国大学医学部教授足立文太郎の対立を代表とするような、医学および人類学研究の共犯関係および人類学研究の手法や思想の差異であった。また、日本騎馬民族説の東洋史や考古学分野での流布の背景にある民間の日本=蒙古起源幻想であった。 その成果の一部を、国際日本文化研究センターの共同研究会(「表現における越境と混淆」井波律子代表)にて「身体の名づけにみるオリエンタリズムとナショナリズム-「蒙古」斑をめぐって-」(2002、9、14)として発表した。オリエンタリズムとナショナリズムという分析軸は、社会学外の研究者からひどく批判を浴び勉強になった。また、思想史面でのアドバイスも9月以降の調査に生かされている。 また、あわせて「蒙古」斑に関するアンケートを作成し、さまざまな大学で教員に主として学生さんへの配布を依頼した(11月頃)。これは統計をとるためのものでなく調べもののヒントや考えるためのアイデアを得るために作成したものであるから、社会調査といえる水準のものではない。2月末日現在、約750部ほど回収できている。自由記述欄で地域の民間伝承や各国の呼び名などが分かりおもしろい。
|