本年は、三年計画の最終年度にあたる。これまでの研究を多様な形にまとめ、さまざまなレベルの媒体で成果の発信を試みた。 まず、雑誌「ほん」(講談社)に4千字程度の文章を投稿、研究の全体の骨子をなるべく短く分かりやすく書いてみた。これは、2004年8月号54〜57頁に「『カムイテッコッ』と『蒙古斑』」というタイトルで掲載された。身体の名づけを文化・歴史社会学的に研究すれば、ついオリエンタリズムやナショナリズムの議論に落ち着いてしまいがちだ。この文章の中では、このような社会学的思考を自己批判した。そして、民俗学的視点の導入の大切さを説いた。これをさらに論理的に学術度を増して実践し、2万字程度で書いたのが日文研叢書(国際日本文化研究センター)に寄せた「身体の名づけにみる学術と民俗-『蒙古斑』をめぐって-」である。これは2004年9月に受理された。現在刊行予定である。 また、「蒙古斑」から少し視点をかえるべく、「ダッチワイフ」という名づけにも取り組んだ(2004年6月5日「ダッチワイフ」京大会館にて口頭発表)。そして、これを改良し2004年12月刊行、井上章一・斎藤光・永井良和・古川誠編著『性の用語集』(講談社)237〜245頁に掲載した。 さらに2002年度に行った蒙古斑アンケート(有効回答854)が不十分なまま放置されていたので、集計や分析を行った。この作業と前述の論考などを再構成し、研究成果報告書『身体の名づけにみる人種・民族イメージの変遷-文化・歴史社会学的考察-』(2005年)を作成した。
|