研究概要 |
在日日系ブラジル人子弟のほとんどは両親に連れられて来日している、また、日本で生まれ育った子どもが徐々に増加している。つまり、彼らは自分の意志で来日したわけではないし、なぜ現在日本で生活をしているのか、また今後のことについてもどのようにすればいいのか、という意識は皆無に等しい。ただ、気がついてみると自分たちが置かれている現実が日本での生活であったというに過ぎない。このような子弟の数は年々増加しており、現在、学齢期(5〜14歳未満)にある子弟が23,610人に上っている(入管協会、2003)。ちなみに、0〜4歳の子どもの数は17,264人であり、合計すると4万人を超える。そのうち、ほとんどが日本の学校に通っているのだが、日本の学校では言葉の問題や習慣の違いをはじめ、いじめの問題に至るまで様々な壁にぶつかり、悩んでいる子供が少なくない。また、親の仕事や生活実態などから生じる問題が数多くある。このような背景から、日本で生活する日系ブラジル人子弟のアイデンティティ形成に様々な問題要因が見られた。例えば、日本の学校に通うか、それとも近年、ブラジル人が集中する地域で設立されたブラジル人学校に通うかが大きな問題である。また、それぞれの学校の特徴は「日本」と「ブラジル」文化の両極端にあり、今後日本での生活に大きな影響を与えることになる。 現実的に日本で長期滞在している日系ブラジル人子弟が増加している。今後も日本社会で生活するためには、決して欠くことのできない「道具」、すなわち、日本語能力の向上を図ることは避けられない。ブラジル人としてのアイデンティティや自尊心の否定につながることなく、そのための機会を充分に提供することは、今後の日本の学校とブラジル人学校の最大の課題となろう。
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