本研究では、まず参与観察をもちいたスーパービジョンの先行研究について確認を行った。この点に関しては、特に児童福祉施設の領域でのソーシャルワークからの先行研究はほとんどみられず、本研究の独自性が明らかになった(この点に関しては、聖徳大学児童学研究所紀要「児童学研究」第5号執筆論文「児童福祉施設における参与観察をもちいたSVモデル策定の意義と課題」2003年3月、で詳細を論じた)。 また平成14年度から平成15年度に研究協力を依頼した久良岐乳児院(神奈川県横浜市)およびドルカス・ベビーホーム(神奈川県綾瀬市)の2カ所の乳児院での月各1回の参与観察とスーパービジョンを継続して行うフィールドワークを中心にする調査研究を行ってきた。具体的には、その日の参与観察の対象となる職員(保育士、児童指導員、看護師)の勤務にあわせ、施設を訪問し、研究者も関わりながら職員と子どもとの関係を中心に観察する。また午後の休憩時間に30分から1時間程度、さらに勤務終了後にも30分から1時間程度の振り返りを中心とするスーパービジョンを行ってきた。さらに、食事場面での職員の子どもへの関わりをビデオに撮り、振り返りの素材とした。特に前者の乳児院では若手の職員養成の一環という側面での関係や感情の振り返りを中心に行い、後者の乳児院では経験年数や職歴などを考慮に入れず、全職員を対象に行ってきた。被観察者からの評価も自己覚知につながるなどの効果を引き出すことができ、構造化された場面におけるスーパービジョンとは異なった直接的な場面の共有という手法による、参与観察者であるスーパーバイザーが援助者の実践への振り返りに対して有効に機能することがわかった。(この点に関しては、聖徳大学児童学研究所紀要「児童学研究」第6号執筆論文「児童養護実践における援助の振り返りとスーパービジョン」2004年、で詳細を論じた)。
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