本年度の研究は、主として2つの村落社会の調査と資料の収集を行つた。 長野県諏訪郡富士見町瀬沢新田区においては、1993年より行ってきた聞き取り調査及び参与監察をさらに進めた。この1年間の調査では以下を中心に聞き取りを行った。(1)かつての酒造出稼ぎ者がリタイアの時期を迎え、各家ごとに新たな労働配分が行われつつあるが、その詳細な状況について。(2)酒造出稼ぎ者以外の家において、ライフステージの変化に伴い、どのように労働配分を変化させて家経営を行っているか。 滋賀県守山市木浜区においては、かつて漁業と農業を包摂した村が地域環境管理を行つていたが、現在は、漁業者=漁協と農業者=自治会が個別に機能しており、かつての村落領域の管理が行われなくなっている。ところが、最近は生業としてではなく、新たな側面から地域環境管理に関わろうとする動きが生まれている。特に、定年後に漁業に戻るケースや、環境運動から漁業に関心を持ち漁協に加入するケースなど、地域沿岸を管理する漁協が新たな機能をもちはじめている。また自治会も独自に地域環境を保持する運動を始めるなど、かつての村落における労働と質的に異なった働きかけが行われている。本年度はこれらの詳細について聞き取り調査及び資料収集を行った。 これらの実証的調査と並行して、労働社会学、村落社会学、環境社会学などの文献収集を行い、理論化に向けての資料整備を進めた。
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