本研究は、我が国における社会人大学院や修了者の処遇のあり方についてその方向性を明らかにすることを目的に実施したものである。なお、実施に当たっては、社会人大学院の中でも最も人数が多い経営学系を中心に研究を行った。 平成14年度においては、各種文献や調査結果を収集し、社会人大学院修了生や企業の人事担当者に対するインタビュー調査を行った。 平成15年度においては、フィンランド及びオランダを訪問し、MBA担当者、MBAを修了した社会人、MBAに在籍している大学院生、企業に対するインタビュー調査を実施した。 平成16年度においては、国内企業における人材育成のあり方についてより詳細なインタビュー調査を行うとともに、フィンランド及びエストニアを訪問し、大学・大学院担当者、行政機関、企業等に対するインタビュー調査を実施した。 この結果、明らかになったことは以下のとおりである。 ・社会人大学院に対する社会人のニーズの高まりがみられ、国内大学院はその整備が急速に進んでいるものの、大学院修了者にとっては企業内における処遇に対する不満も大きく、企業も修了者を高く評価していない。 ・フィンランド、オランダ、エストニアのMBAにおいては、フルタイム型に加え、在職者を対象としたパートタイム型のMBAコースを併設しており、その移動も容易である。 ・修了生の採用企業は、採用時においては、MBAを持っていることを重視しているものの、採用後の処遇に成果に応じて評価しており、成果がよくない従業員は比較的短期に解雇している。 ・一方、日本国内においては、MBA修了後すぐに処遇を高めることはないが、多くの修了者はその能力を社内において発揮しており、長期的にみた場合は高い処遇につながることも多い。 ・今後の社内における幹部への選抜をより早くする傾向があることから、MBA修了生をより優遇する可能性もある。
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