研究概要 |
1)質的調査を中心としたデータ収集 主に,G県立聾学校の重複クラス担当の教員,A県立I養護学校で聾重複児を担当している教員,G県内の聾重複児をもつ親の会の会員である聾重複児をもつ保護者の方々にインタビューを行った。聾学校の場合,コミュニケーション環境が比較的良好な状態で保障されるメリットがある反面,「個別の指導計画」の作成に焦点を当てると,聴覚の単一障害の児童生徒とは教育課程の編成が全くことなるため,重複クラスの担任だけで不安を抱きながら試行錯誤しつつ作成している現状が見られた。その一方,養護学校の場合は聴覚障害についてやコミュニケーション環境の保障については十分ではない場合がしばしば見られる中で,I養護学校のように,聾重複児以外の知的障害のみの子どもも交え,クラス全体で手話を取り入れて授業を行っており,「個別の指導計画」作成についても,学部全体で協同的に行っている先駆的な実践も見られた。こうした取り組みがI養護学校において実現した経緯について今後明らかにしていきたい。 2)先行研究の整理 聾重複児の個別の指導計画の作成に絞った研究は見られないため,(1)個別の指導計画の作成を巡る課題等についての文献と,(2)聾重複児への教育的対応に関する課題についての文献に分けて整理を進めた。個別の指導計画の作成については,知的障害養護学校において活発な議論がなされているものの,聾教育においてはほとんど議論がなされていなかった。その一方で,聾重複児への教育的対応については,個人の教員等による事例研究の範囲にとどまり,組織的に取り組まれた研究も少なく,また,学校あるいは学部全体での協同的な取り組みとして行われた研究もほとんど見られなかった。
|