研究概要 |
平成14年度は,イギリスにおける現地調査を中心に研究を進めた。イギリスにおいて初等学校及び中等学校のSENCo (Special Educational Needs Co-ordinator:特別な教育的ニーズ・コーディネーター)に面接をし,具体的な研究協力についての調整を行うとともに,現在のSENCoの活動の実際に関する情報の収集と文書資料を入手した。そこから明らかになったことは,SENCoの制度が用意されてから,およそ10年が経過したものの,未だなお十分な養成制度が確立されていないことであった。とりわけ,大学におけるSENCo専門の養成課程がないことにも起因し,また,SENCoの業務範囲の広さ,要求される専門性の高さなどから,新任の養成が困難である現状が浮かび上がってきた。すなわち,SENCoの養成は,現職教育を基本としなければ困難であるということが明確にされた。実際に,現在のSENCoは十分な教職経験を持つ人しか任命されていなかった。今日,日本においても学習障害児等への対応に関して,支援コーディネーターの制度の導入が検討されているが,これにおいても現職養成の重要性に示唆を与える結果となった。また,制度面での課題を整理すべく,関連文書の入手と検討を行った。この点に関して,平成14年度の研究成果のうち,2001年の改訂コード・オブ・プラクティスのSENCo制度への影響について,学会誌に投稿し,平成15年度中に掲載される予定である。
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