昨年度から今年度にかけては、生徒に対する追跡インタビュー調査に加えて、現在の小・中学校教師に対するインタビュー調査を実施した。2002年の小・中学校の指導要録の改訂を契機に、今まさに過渡期にある中学校における評価行為に着目することによって、社会・政治的力学が作用する教育改革の実施過程を解明し、その帰結を分析した。そもそも評価という行為は、教育行為の中でもすぐれて社会的な行為である。生徒は、学校における評価のプロセスや意味をそれぞれの立場から洞察し、教師との関係や教室内での自らの行動を変えていく。こうした過程はまさに、「社会化過程」や「日常的な選抜過程」そのものでもある。それ自体、社会的・政治的に規制されている教師の評価行為が、今度は教室空間の中で、生徒を巻き込み、生徒の行動や能力の育成をある方向性にコントロールしていく可能性について検討を加えた。詳細な結果については、『教育社会学研究』72集(2003年5月刊)にまとめた。 あわせて、中学生および高校生に対するインタビュー調査を実施した。小学校から中学、高校、大学あるいは職業社会へのシステム間トランジッション(移動)が、個人の自己評価、進路選択、ライフコースにいかなる影響を与えているかを再検討した。来年度に、生徒に対する質問紙調査を実施する予定である。
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