研究概要 |
本年度は、分析枠組みの基礎的・理論的検討と、観察調査の準備を行った。 第一に基礎的・理論的検討としては、Weick, K.E.やAlvesson, M.とBerg, P.O.らを中心に文献を渉猟し、解釈的パラダイムに立つ組織シンボリズム論が有効であることを明確にした。すなわち、本研究における観察調査では、学校の組織的条件を探究する場合に、自覚的なリーダーシップやマネジメントの取り組み(意図的・目的的な行動面)に着目するというよりも、結果として組織成員に共有されている「文化」(解釈のための意味体系)を観察から読みとり、そうした「文化」が成員間に共有されるに至る過程や要因を明らかにすることが重要であると考える立場をとる。 第二に、平成13年度に実施した質問紙調査の分析・考察をさらに展開したが、ここからは、学校組織に対するコミットメントの程度が、精神的安定度や学校での行動傾向と相関があることが改めて明らかになった。これは、個々の教師の健康な教職認識にとって、学校の組織的条件が重要であることを実証的に確認することとなった。その一方で、本研究では「健康な教職認識」を〔子ども理解規範〕と〔学校組織成員としての行動規範〕との2軸から捉えようと考えていたが、質問紙調査では〔子ども理解規範〕について必ずしも正確に測定し得たとは言えない結果となり、「健康な教職認識の醸成」の捉え方について、再検討が必要な点が課題として明らかになった。 第三に、観察調査対象校の選定については、埼玉県志木市教育委員会や新潟県立教育センターを訪問し、具体的な学校単位での取り組みについての情報を収集した。そこから、学校での教育目標達成の手段として組織的展望を持ち、思い切った取り組みをしている学校や教育委員会の「文化」(解釈のための意味体系)に着目して観察調査候補校を抽出した。当初の研究計画では、各候補校への予備調査から長期観察調査の依頼までを年度内に行う予定であったが、まだ十分な予備調査を実施していないため、長期観察対象校は未定である。現在もいくつかの候補校における予備調査を継続し、次年度以降の調査準備を行っている。
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