本研究では、家庭に日本語と英語の言語環境をもつ子どもたちの教育の実態を把握するために、3グループを対象に比較調査を行った。以下、グループごとに調査の概要と研究の成果を記す。 1 フィリピン人女性と日本人男性とのあいだの子ども 奈良県および秋田県において、地域の日本語教室の参観および母親や関係者への聴き取り調査を行った。その結果、フィリピン人の母親はフィリピン人であることを誇りにしながらも、子どもにはなかなか自文化を伝えられずにいること、子どもはフィリピン的な文化背景を否定的に捉える傾向があることがわかった。こうした成果の一部は、5月の異文化間教育学会(さいたま・駿河台大学)にて発表し、同学会誌にまとめた。 2 日本人女性とアメリカ軍関係者との子どもであるアメラジアン 沖縄での現地調査やアメラジアンに関する文献研究を行った。その結果、多くのアメラジアンは、複数の文化的背景の中で自らのアイデンティティを模索していることがわかった。そして、アメラジアン・スクールは、そのような子どもたちが自らの独自性を肯定できるように教育を行うと同時に、日本の公教育がより多文化化するように見直しを求めていることが明らかになった。こうした成果の一部は、日本子ども社会学会誌に発表した。 3 一方の親が英語圏の先進国出身で他方が日本人である子ども 7月から8月にかけて、イギリス・ロンドン大学教育研究所にて国際児をめぐる多文化教育について文献・資料を収集した。また、移民の多住地域にて調査を行った。調査結果は、現在整理中である。 以上のことから、国際児の多様性が明確になると同時に、グループを越えた共通性が明らかになってきた。今後はさらに聴き取り調査や参与観察を重ね、日本社会が真に多文化化していくために、国際児の教育に対して国家がなすべきことや、公教育が見直すべきことを解明していく。
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