研究概要 |
本研究の次年度においては、まず遠隔教育の展開をもとに、おもに遠隔高等教育における学習形態・方法の新しい動きを概観し、その可能性と課題について考察した。 その結果、今後の遠隔教育は、情報通信技術を教育的に利用することにより、遠隔教育にしかできない学習者中心の学習形態・方法にこそ活路を見いだすべきであると判断された。そのためには、遠隔教育において自己主導的学習(self-directed learning)を実現することができるように、学習支援のあり方を問わなければならないことがあらためて確認された。 それに関連して、遠隔学習者に関する理論研究が、引き続き今年度も主要な研究課題となった。なかでも、前年度から着目していたムーア(Moore, M.G.)の「自律性と独立性の理論(theory of autonomy and independence)」が有効な示唆を与えてくれた。その際、とくに「学習者の自律性」に焦点をあてて研究を行った。今後は、学習者の自律性と自己主導性の関連について考察をすすめていきたい。 さらに、ケンバー(Kember, D.)の理論についても検討をはじめた。彼のオープン・ラーニングのモデル(Open Learning Model)も、遠隔学習者の特性や学習支援を考えるうえで効果的な枠組みであることがわかった。彼のモデルは、学習者が遠隔教育プログラムを成功裏に達成(修了)するためのさまざまな要因、とくに学習者が彼らの学習と仕事や家族、社会的な責任とをどの程度、調整することができるかに注目している。遠隔教育に関する調査研究にも適用可能な、このケンバーのモデルについては、最終年度でも引き続き研究課題としたい。
|