本年度はまず、国内外の大学(院)教育の職業的レリバンス研究や就職・人材教育関連雑誌で用いられている能力指標の収集を行った。続いて、収集された能力指標の特性を分析し、従来の大学教育の職業的レリバンス研究における、大学教育と職業との接点の捉え方について国際比較を行った。そこでは、(1)日本と欧米では能力指標と捉え方に相違があり、それは大学教育と職業との接続の相違を反映したものであること、(2)能力指標は大学教育の論理で作成されており、職務遂行能力という視点に欠けていること、これらから(3)能力項目の抽出の仕方や評価の問い方には検討・修正の余地があること、の3点が明らかとなった。またこれと関連して、日本とオランダの2国間比較を行い、大卒者の能力形成に対する認識の異同についても考察を試みた。 上記の研究と並行して、大卒労働者の調査や大学教育の成果をめぐる能力評価の分析では先進国であるオーストラリアを訪問調査し、関連部署(ACEERやGCCA)において担当者へのインタビューや各種の資料収集を行った。また、我が国で展開中の民間のビジネススクールに訪問調査を行い、そこに参加している社会人の能力に対する認識や教育内容に関する意見交換を行い、大学教育との異同についての基礎的な資料の収集を行った。加えて、民間の業者が行っている大学生の教育満足度や大学評価に関する調査の実態や課題、今後の展開についても、訪問調査を行い、関連資料や情報の収集に努めた。これら一連の訪問調査の結果は、来年度成果としてまとめる予定でいる。
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