平成15年度の研究においては、[A]カリキュラム設計に関する理論的研究(継続)、[B]日本とドイツにおける授業実践の記録と分析について、次の成果が得られた。 (1)理論的研究では、日本、ドイツの関連文献および実践報告集を収集し、文献による理論的研究を行った。日本、ドイツともにOECDによるPISA研究の影響を受けた学力論争が活発化し、市民性形成論としては近視眼的な論調が目立った。年度当初に予定していた米国に関する研究は、日本とドイツの調査、検討に予想以上に時間を要したため文献のリストアップに留まった。 (2)授業研究では、日本においては岡崎市立甲山中学校ならびに稲沢市立稲沢西中学校(ともに愛知県)を、ドイツにおいてはハンブルク市内の同等学年を対象とし、市民教育分野の学習を始める第一単元の授業実践を記録にまとめ、分析を始めた。ドイツの実践記録の収集には、T.Grammes教授(ハンブルク大学)の協力を得た。 (3)海外での調査研究は、オランダにおける国際市民教育・経済教育学会に参加し、世界レベルでの市民生開発カリキュラムの研究動向を探るとともに、ベルリンでの市民教育ワークショップにおいて日本の実践に関する報告を行った。アメリカでの調査は、当初John Cogan教授(ウィスコンシン大学)並びにCatherine Lewis教授(Mills大学)の協力を得て、米国における(2)と同等の実践記録を採取する予定であったが、日本とドイツの調査、検討に予想以上の時間を要したため展開できなかった。
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