研究概要 |
生涯学習系センターを配置している国立大学を対象とし,大学開放事業を充実させるために,大学の組織・事業・財政のシステムをどのように整備していくかについて検討を行った。 わが国の国立大学における生涯学習系センターは,2名から数名規模の専任教員を有し,小規模ながらも研究活動と教育活動さらには大学開放事業の運営と幅広い活動を行っているのが特徴である。調査を行った米国ジョージア大学,シカゴ大学,豪州オーストラリア国立大学,シドニー大学等との比較では,これら海外の先進校が大学開旅を独立した部局として運営し,大学の教員や研究成果の活用は必ずしも進んでいない。これに対し,わが国では主に学内の教育資源と研究成果を活用する形で大学開放事業が捉えられ,生涯学習系センターと諸部局との連携が強く要請されている点が特徴となる。 このような状況において生涯学習系センターがどのように大学開放事業の運営に関わるかにういて「大学開放事業システムに関する調査」を実施して検討した。その結果,大学開放事業に関する全学委員会の設置は約6割程度にとどまり,しかもその委員会規程は,大学開放事業に関する踏み込んだ検討を保障するだけの具体性を有していないことが明らかになった。また,従来大学開放事業の中心を占めてきた公開講座については生涯学習系センターの貢献が明確であるものの,それ以外の大学開放事業については全学的調整や連携が不十分であることがわかった。 国立大学はちょうど国立大学法人化という大きな転機を迎えようとしており,大学開放事業のあり方も大きく変わろうとしている。そこで,大学開放事業の運営費確保の方途,受講料,謝金等の方向性についても検討を行ったが,これについては調査時点で確定していない機関が多く,引き続き推移を見ていく必要がある。
|