近年、小学生から大学生にいたるまで学力低下が叫ばれている。学習内容が3割削減されるなどの教育改革の動きにともなって、そうした危倶の声はますます高まっている。文部科学省もようやく一部で学力低下を認め、「発展的な学習」などの対応も始まっている。 学力低下の問題は沖縄にとっては県外以上に深刻であると言える。なぜならば、沖縄はもともと学力の低い県であり、低学力が学力低下の全国的な動向とあいまって、いわば「二重の学力問題」を抱えていると言えるからである。 そうした問題関心から、本研究では沖縄の状況が県外に比べてどの程度深刻なのかを明らかにし、解決策を見出すために、沖縄県内の二つの公立中学校と県外の二つの公立中学校の二年生を対象とした調査を実施した。調査は2002年10月に実施し、沖縄県内の中学生300名、県外472名、合計772名を対象とした。調査は「中学生の生活に関する調査」と称した質問紙と「学力検査」(英・数・国)の二つからなる。 本格的な分析は次年度になるが、現段階の試行的な分析では以下のようなことが明らかになっている。(1)学力検査の得点は沖縄県の生徒の方が低い、(2)沖縄の生徒の学力が低いのはパーソナリティとも関連している、(3)そうしたパーソナリティは沖縄の文化の影響を大きく受けている、(4)学力や生徒のパーソナリティと社会階層(親の学歴、職業等)も関連しており、沖縄の社会階層は県外に比べて低い。 次年度はそうしたこともふまえてさらに詳細に分析を進め、日本教育社会学会などで成果を発表する。
|