平成14年度は、これまでの研究で行ってきた明治期の青少年の逸脱問題に関わる法制度のイデオロギー的分析をふまえて、以下のような作業を行った。1)先行研究の再検討:これまでになされてきた明治期の青少年の逸脱問題に関する諸研究を再検討し、それらの知見と問題点、今後明らかにすべき課題を明確にした。これまでの研究においては、イデオロギーや非行少年の処遇に関わる人々の思想分析が中心であって、またそれらを批判的に考察する視点が欠如していた。と同時に、比較社会的な視点も充分ではなかった。さらに、戦前期の子どもやその家族の置かれていた社会状況と少年司法制度との関連性についての考察も不十分であることが明らかとなった。2)明治期の青少年の逸脱問題の実態分析:当時の新聞や雑誌に掲載された記事により、青少年問題についての報道や世論を分析すると同時に、各種の統計資料を用いて、非行の数量的データを収集し分析する作業を行う計画であった。『司法省年報』および『警視庁統計書』などを当たり、当時の青少年の逸脱の実態が分かるデータがある程度存在することが判明したが、不十分な点が多いことも分かった。これらのデータは現在まだ分析中である。3)感化教育の実態、:当時の感化院での教育の実態について、該当する施設や施設に関わる資料を所蔵する機関の訪問・資料収集・聞き取りを行う計画であったが、該当の施設の所蔵する資料状況について、情報収集をするにとどまった。4)アメリカ合衆国における少年司法政策の展開の分析:二次資料を収集するとともに、分析に着手した。今年度の成果の一部は、明治期の非行少年の処遇の状況に関する記述を含めて、「非行少年の更生とファシリテーター-保護司に焦点を当てて-」(津村俊充・石田裕久編『ファシリテータートレーニング』)にまとめた。
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