本研究は、1922年旧少年法制定に至る過程における近代日本の青少年に対する社会統制のあり方を、日本の少年司法に影響を与えたアメリカ合衆国のそれとの比較を通じて検討するものである。本年度は、過去2年間の成果をふまえ、以下の3点に焦点を当て、研究を進めた。 1)アメリカ合衆国における少年司法政策を日本に紹介した資料の分析を、過去2年間に引き続き行った。今年度は特にアメリカ合衆国に置いて資料収集を行い、19世紀末から20世紀初頭にかけての万国監獄会議の実施状況や、米国および日本からの少年司法関係者の出席状況、講演の内容などについて把握した。それにより、この時期、国際的な司法政策についての情報交換が活発であったことが明らかとなった。しかし、出席者が帰国後にどのような活動を行ったかについては、確認できていない。 2)明治期および大正期の青少年の逸脱問題の実態に関する史料を収集・分析する作業を行った。具体的には、『監獄雑誌』などの雑誌に寄せられた記事を収集し、1922年旧少年法制定以前には、少年司法のあり方への批判が高まっていたことが分かった。研究計画では、一般新聞などからも一般的な少年犯罪への認識を明らかにしたいと考えていたが、これはほとんど実施できなかった。 3)アメリカ合衆国における19世紀末から20世紀初頭の少年司法政策の展開について、二次資料および一次資料の収集を行った。当初は当時の感化施設での処遇状況をローデータに当たって分析することを目指していたが、時間などの制約上叶わず、その代わりに当時の感化教育についてのレポート類を閲覧した。これにより、感化教育が、従来の研究で論じられていたような方向ではなく、その逆の方向で形成されたという仮説を裏付ける資料を収集することができた。 今年度および過去2年間の資料収集と分析により得られたこれらの知見を論文にする作業は、残念ながらあまり進められなかった。今年度で研究助成は終了であるが、これまでの成果をまとめる作業に、今後専心していきたいと考えている。
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