本年度は、教育研修センター、広島県、イリノイ州、メリーランド州等における保育者の現職教育・研修の実態を、文献資料の検討およびヒアリングにより調査した。 結果、わが国では、公的研修機関でも幼稚園教育・保育領域の再教育・研修がシステム化されていないことが明らかになった。幼稚園教育の領域では、小学校の再教育システムを代替しているという特徴があげられる。プログラムも未整備であり、給与や職階との関連も低かった。 文部科学省による「幼稚園教員の資質向上について:自ら学ぶ幼稚園教員のために」(平成14年6月24日)においても副題にあるように、保育者個人の動機に基づく主体的学習を推進しようとする傾向が強い。一方、イリノイ州やメリーランド州では、研修センターのプログラムが給与体系や職階と関連していることが明らかになった。研修動機は例えば自らのクラスで統合保育を実施することとなった保育者の実践的な課題と迷いに関連が深い。実際のプログラムが夜間大学院等でも実施されており、再教育・研修の機会も多様である。 グローバライゼーション化のもと専門職化と制度化、体系化が進められる中で、近年、保育の「質」を問う議論、第三者評価、苦情処理等が進められつつある。保育領域の特性は、一人ひとりの子どもを尊重する点にあり、個別性と多様性への対応といった不確定要素の強い点にある。 この点を配慮し、わが国の既存の特徴を残しつつ、保育者再教育・研修システムの専門職化と制度化、体系化を進めることが、今後の課題であると考える。また、保育者の現職再教育・研修の具体的プログラムの検討、再教育・研修メディアとしての専門誌に関する比較検討も今後の課題としたい。
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