民族・環境等の問題が、ますます一国の文化に同化する形では解決困難となった現状を把握し、今年度は「多文化保育」「外国(人)」に対する学生の意識調査の継続研究を続けると共に、保育の現場における事例収集を実施した。また、検討結果から学生に必要と思われる課題設定の検討をした。実施時期は次のとおり。4月〜6月 ・昨年度の質問紙調査の再検討 ・学生への追跡調査(集計・分析) 7月〜2月 ・保育現場における「多文化保育」の事例収集とその検討 3月 ・事例の検討 ・学生の意識とニーズに対応した課題設定の検討 これにより特に以下の点が明らかになった。 1.質問紙調査の結果、学生の持つ「多文化保育」への理解・関心は毎年高まる傾向にある。 2.質問紙調査・事例検討から、15年度はヨーロッパ・アメリカ方面同様、アジア方面への興味・関心が非常に強い傾向が特徴的である。 3.保育現場における事例は、「多文化保育」に対して前向きでありつつ、重要なキーワードである多様性を無視したものであることが多いと示唆できる。 事例によって多様性のあり方について学生自身が問い直す必要が挙げられる。 4.保育者として、将来子どもの多様性に対応していくための授業課題として、まず蓄積された固定観念を排除する方向での教材作成が不可欠だと考えられる。 5.4.の授業課題を提示することで、学生自身の保育改善の方向性が広がる可能性が高いと思われる。 6.学習課題についてはさらに検討の余地はあるが、学生のニーズから、できるだけ具体的な画像を取り込んだ課題等が望ましいと考えられる。 7.調査結果等から、授業形態については、演習が望ましいと思われる。実際に経験することでこれまでの固定観念が削除され、新たな保育観が形成される可能性が高いと示唆できた。
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