本年度の研究実施計画に基づき、パイロット調査データの分析(「研究実施計画」の1に対応)、そのために必要とされる資料収集と文献調査(2と3に対応)を中心に研究を進め、日本教育社会学会第54回大会で報告を行い(4に対応)、調査レポートを『研究開発部リサーチノート』にまとめ、2つの学術論文として『教育社会学研究』『大学入試センター研究紀要』に投稿し、ともに掲載された(5に対応)。 研究によって明らかになった知見を、論文ごとに以下に示す。 『教育社会学研究』掲載論文の主たる結果:1)学習意欲はおもに高校の序列的位置づけに応じて決定される(家庭背景の直接的影響力は弱い)。2)進路選択においては家庭背景(父母学歴)の直接的な影響力も無視できない。3)家庭背景と個人の価値志向には全く関連がなく、その内面化を通じた教育階層の再生産はない。ただし、価値志向自体は学習意欲や進路希望に無視できない効果を持つ。 『大学入試センター研究紀要』掲載論文の主たる結果:高校ランクや個人的要因をコントロールしても、カリキュラムの水平的多様性が以下の効果を持つ。1)生徒の多様性と自主性を尊重するカリキュラムで、内発的学習意欲が高い。2)学習時間は、伝統的なカリキュラム編成の学校、およびコース・類型を設定しない、共通履修科目の多い学校で長い。3)内発的学習意欲は学習時間と関連しない。4)大学志願者の受験教科数は、カリキュラムの構造的特徴(専門科目の割合や選択の自由度)に依存し、それがまた、学習時間の長短とも関連する。 なお、まだ研究の途上ではあるが『研究開発部リサーチノート』に示したように、生徒によるカリキュラムの選択基準や、選択方法・内容に対する評価にも、カリキュラム編成による違いが認められた。
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