本年度の研究実施計画に基づいて研究を進め以下の成果を得た(番号は研究実施計画に対応)。 1)(1)カリキュラム・トラッキングの分析を進め学術論文にまとめた(『教育社会学研究』に掲載)。(2)私立学校や学習塾の利用と家庭背景の関連について分析を進め私的な研究会において発表した(学術誌への投稿準備中)。2)(1)UCLA社会学部を訪れ"Trends in Educational Attainment Process in Japan"と題する研究報告を行った(分析を継続)。(2)高校のカリキュラム編成および序列的構造の全国的な状況に関するデータを収集し分析した(近日中に研究レポートにまとめる)。 1)(1)では、今次の教育政策への対応を把握できるよう、カリキュラムの「特化」の内容、および選択の自由度という2つの評価軸に基づいてカリキュラムを類型化し、「進路選択における水路づけ」「階層化」の2視点からトラッキング効果を分析した。その結果、生徒の学力や性別、高校ランク等をコントロールしても、1)高学歴の親を持つ者は学業重視型を好み専門重視型を避ける傾向にあること、2)学業重視型は大学進学希望を促進し、自由尊重型は専修学校進学希望を促進すること、3)一般的な危惧とは異なり、自由度の高いカリキュラムにおいて、進学希望の階層差が助長される傾向はみられないこと、4)どのカリキュラム・タイプでも、両親の教育程度は大学進学希望に対し、同程度の直接的な影響を持つこと、等が明らかとなった。 2)(1)では、UCLA社会学部のMare教授が考案し、多くの国々で検討されている、「教育キャリアの連続的移行に関するロジット・モデル」を批判的に検討し、Mareモデルが必ずしも妥当しないこと、教育の成長段階によって異なること等を指摘した。現在、わが国のトラッキング・プロセスを考慮してモデルを修正し分析を進めている。
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