本年度は、プリーのあるアーシュラムに数週間滞在し、集中的な調査に入った。まずはそのアーシュラムの歴史的背景や教義などについて調査した。その過程で、インタビューをするほか、文字資料を集めて読解を進めた。またアーシュラムを形成するグル、出家修行者(サンニャーシン)、修行僧(ブラフマチャリン)、在家修行者、在家信者、訪問者などをめぐる、親族関係、地縁関係、師資相承関係などについての基礎的調査を行い、そこにおいて展開する信仰や修行などの宗教実践について調査を行った。それぞれの人々のライフヒストリーや、アーシュラムに来るに至った経緯、修行や信仰に求めるものなどについてのインテンシブなインタビューを行った。そこにおいては、変容する現代インド社会において新たに形成される関係性や共同性の中で、人々がどのような問題を抱え、宗教にどのような形での救済を求めているのかについて、特に注目している。 またカルカッタの国立図書館において、プリーの僧院に関する植民地時代の資料を収集した。ブバネーシュワルの州立文書館では、課題に関連する植民地時代の記録を探そうとしたが、残念ながら発見することができなかった。 フィールドワークに出られない滞日中は、現地調査で得られたデータを整理・分析した。また基礎的な作業として、関連文献を収集し、読解を進めた。特にウトカリヤ・ヴァイシュナヴィズム(オリッサのヴィシュヌ派)の教義について、文献を収集し、その歴史的地域的位置付けを試みた。
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