研究概要 |
最終年度である本年は、地域環境主義と地球環境主義のイデオロギーの対立、ならびにその現状において、いかに沿岸資源であるナマコの資源管理が可能となるのかを主要な研究テーマとした。具体的には、申請者が2003年度に参加したふたつの国際会議、すなわち1)FAO(国連食料農業機構)によるWorkshop on Advances in Sea Cucumber Aquaculture and Management (ASCAM), Dalian, China, 14-18 October 2003ならびに2)CITES(ワシントン条約)によるTechnical workshop on the conservation of sea cucumbers in the families Holothuridae and Stichopodidae (Decisions 12.60 and 12.61), Kuala Lumpur, Malaysia, 1-3 March 2004でおこなわれた議論の整理と分析をおこなった。そして、2005年2月に開催された、水産庁での「ナマコ対策会議」において、ナマコ資源管理のポリティカル・エコロジーについての問題点を報告した。 また、上記議論をみずからの事例で深めていくため、北海道北部の利尻島と稚内市でナマコ資源管理について史的変遷と現状についての聴き取り調査をおこなった。道北地域のナマコは、香港市場でもっとも高く評価されており、市場圧力と資源管理との狭間で生産者は揺れている。日本の資源管理を展望するうえでも、北海道の事例は注意が必要であるが、それはそれぞれの漁村地域のコモンズをあらたに組み立てる作業である。 とはいえ、香港市場も、持続的な資源利用をもとめており、製品の規格に大きさも設けようとする意見がでてきている。そのような動向が、いかに国内の加工業者や漁業者たちに伝わるのかの過程検証は、あらたなネットワークの機能をあきらかにするものであると同時にグローバル・コモンズとローカル・コモンズとを接合する契機となる。
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