科学研究費の受給2年目である本年は、岩手県庁にある行政情報センターへの史料調査に1回、東京の国立公文書館・国会図書館への史料調査を4回実施し、基礎的な資料の渉猟に努めた。これらの作業によって、当面の岩手県内の史料調査と、中央レベルでの史料調査を終えた。渉猟された史料は、デジタル・データとして整理・保存がなされた。 書籍としては、『岩手県町村合併誌』をはじめとする岩手県の郷土資料を購入した。入手困難な関係図書と目録に関しては、福島大学図書館を通じて文献複写を依頼し、入手した。 上記の作業によって、平成15年度には、当初予定したヒアリングを除いて、おおよそ史料収集段階を経て研究段階に入ることができた。現在、収集した資料の読み込みを実施し、論文化を進めている。 上記の検討の結果、昭和初年の岩手県の経済状況は、予想したほど悪くないことがわかった。しかし、県内においても階層間の格差が大きく、水平的格差の面を考慮に入れた上で地方財政調整制度の生成過程を考察する必要を新たにした。しかし、それらの事実も、当初構想した「相対的不償感」というキー概念で分析可能であるから、フレームの微修正によって対応可能な範囲である。こうした作業をふまえて、報告書執筆を期したい。 なお、平成16年度は、手つかずになっているフィールドワークを実施する予定である。そのかたわら、地方財政調整制度構想者三好重夫(故人)の子息である三好浩介氏、および自治官僚OBである荻田保氏のヒアリングを実施することとしたい。 最終的に、今年度中に研究の総括を行い、報告書を作成する見通しである。対象時期は日露戦後から1940年地方財政制度改革までの約40年間とし、制度確立までの過程を概略し、日本近代における「再配分」と行政の安定化の意味について再考することが目標である。
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