科学研究費の受給最終年である本年は、史料調査および文献調査を実施した。史料調査は、地方財政調整制度の構想者三好重夫の初めての任地である新潟県において、平成16年8月から9月にかけて調査を実施した。調査過程で、新潟県庁文書は新潟県立文書館の現物史料と、新潟県庁所蔵のマイクロフィルムの2つが存在することを知ったが、今回は専ら新潟県立文書館での簿冊分析を実施した。文献調査は、一橋大学付属図書館において、平成16年7月29日および同11月26日に実施した。一橋大学は各地の一次史料を多く所蔵し、地方財政や地方経済に関する多くの書籍を所蔵しているためである。 史料調査、文献調査の終了後、それぞれについて、調査結果のとりまとめを実施した。平成16年中に史料のデジタル化およびその整理を終えて、前年度までに渉猟した史料と併せて読み込みを行った。 その結果、今回の研究テーマに関しては次のような知見が得られた。つまり、さまざまな地域間格差を調整しようという合意が社会に形成されるにあたっては、地域間格差の存在という「事実」よりも、「格差感」が社会的に認知されていくことが重要であるということである。なお、この事実は、前年までの調査結果を裏付けるものでもあった。 現在までに、まとめることができたライトモティーフに相当する部分は、雑誌『地方自治職員研修』に発表した(詳細については、裏面参照)。現在は、上記の調査結果に基づいて研究の総括を行い、雑誌報告を発展させた学術論文を鋭意作成中である。内容としては、対象時期を日露戦後から1940年地方財政制度改革までの約40年間とし、制度確立までの過程を概略し、日本近代における「再配分」と行政の安定化の意味について再考することが目標である。その結果、財政調整制度確立の意味のみならず、戦時体制の歴史的な意味、さらには「平等化」への流れがもたらした「意図せざる結果」の意味について考える手がかりが得られるであろう。なお、現在とりまとめている研究の内容は、平成17年度中に学術雑誌に発表し、公刊される予定である。
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