課題研究の最終年度として、研究計画に基づき、基礎資料・研究文献の調査・収集・分析にあたった。特に今年度は、昨年度、本務との関係で行うことができなかった米国国立公文書館での調査研究を実現させたことをはじめ、福岡県内の在日朝鮮人に関する調査・研究を深めることができた。 米国国立公文書館では、計画通りG-2 Periodic Reportsなどの米軍関係資料を収集することができた。日々報告書ではなかったものの数日間隔での記録であり、北部九州沿岸における出入国状況等の調査報告書を入手することができた。他地域のものでは、米軍による在日朝鮮人に対する朝鮮語で書かれた伝達文(実物)なども目にすることができ、日本占領当初の、米軍の在日朝鮮人に対する行動の一端を知ることができた。また日本では、朝鮮人側の資料として、既刊資料集未収録分の『解放新聞』を調査研究することができ、50年代前半までの期間における北部九州各地の在日朝鮮人の動向を、断片的ながらもまとめて捉えることができた。 現在、大韓民国では、日本統治下における強制動員の真相糾明等に関する時限立法の発効や、日韓条約関係資料公開の開始などと関連し、近現代史の抜本的見直し・再評価が進んでいる。他方、在日朝鮮人は、日朝関係・日韓関係に大きな影響を受けつつ、あらためて日本社会における自らの歩み・朝鮮半島との関係をふりかえっている。(昨年制作された、福岡県折尾の朝鮮高校建設を主題とした記録映画「リメンバースピリッツ!」もその貴重な一作といえる。)今後は、こうした現在の動向をみすえながら、北部九州地域の在日朝鮮人の生活史を軸に、戦後東アジアにおける脱植民地化・冷戦とナショナリズムの問題を本格的に検証する作業を、早急におこなってゆきたい。
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