皇陵巡拝の動向のなかで、各天皇陵およびその周辺における道路・橋梁等の整備、道標等の設置など周辺整備について現地調査を実施した。また、各地域の図書館において、各天皇陵および史跡案内書等について調査した。14年度は、多摩陵(大正天皇陵・東京都)、阿弥陀寺陵(安徳天皇陵・山口県)、白峰陵(崇徳天皇陵・香川県)、神代三陵のうち可愛山陵と高屋山上陵(鹿児島県)について調査を行った。 多摩陵では、八王子駅より陵までの参拝ルートを現地調査した。銀杏並木、鉄道廃線跡、参拝道の橋梁等の状況などを調査した。多摩陵周辺は、鉄道を除けば、昭和初期の状況が比較的残存していると考えられる。また、東京都立中央図書館所蔵の多摩陵に関する文献を調査した。阿弥陀寺陵では、旧下関駅跡からのルートを調査した。当地の場合、旧下関駅前の旧山陽ホテル建物が現存するが、他に皇陵巡拝にかかわる構築物等は認められなかった。また、山口県立山口図書館において文献調査を実施した。陵についての文献は多くなかったが、これまで関西や東京で所蔵されていなかった皇陵関係雑誌(大阪市内で発行)が所蔵されており、新出文献として今後分析を実施する。白峰陵では、鴨川駅からのルートを調査した。このルートは白峯寺に至る遍路道と重なっており、遍路関係の道標を多数認めた。さらに、大正期の陵への参拝道の改修について記録した石標を認めた。また、香川県立図書館において文献調査を行い、大正期以降、地元で崇徳天皇の聖蹟保存運動が展開されていたことを知り得た。可愛山陵・高屋山上陵については、それぞれ最寄り駅から踏査を行ったが、皇陵巡拝に関する構築物等は乏しく、また鹿児島県立図書館で神代三陵に関する文献調査を実施した。 15年度は、関西所在の天皇陵を中心に現地調査を実施する予定である。
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