平成14年度においては、17世紀、18世紀の帰化ならびに国籍付与取得者の実態を明らかにするべく、すでに現在一部実施している史料(Letters of Denization and Acts of Naturalization...)の解読とそのデーターベース化をすすめた。さらに長期的な比較を容易にするため、16世紀の事例分析に使用したデーターベースと現在読解を進めている救貧関係の史料のデーターをコンピューター上で整理し直し、データーおよびに分析の精度の向上を目指している。 データー処理と同時に、今年度は近世イギリス移民史、近世イギリス社会史、ナショナル・アイデンティティ関連図書・史料の収集とイギリス議会の議会史料(両院議事録や審議録)の収集と精読につとめた。また一般帰化法制定にかかる議論に関する史料の収集にも努め、これまで、集めてきたものに加えて、議論の賛成派と反対派(ロンドン市を含めて)双方によって、作成されたプロパガンダ用パンフレットや出版物、一般の人びとのイングランド人としての意識を探るべく、新聞や旅行記、イギリス論など、当時出版された出版物の状況について調査を行った。 また、課題研究の派生的研究として、近世イングランドにおける外国人に対するホスピタリティのありようと、ナショナル・アイデンティティの問題についても考察を進めた。この問題については現在小論を準備中である。さらに、帰化法とプファルツ移民の問題についても現在考察を進めている。上記、課題研究を補完する2つの研究については、年度内に研究会で研究報告を行った。
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