研究概要 |
本年度は、昨年度に続き各地の国府・国分寺・国分尼寺およびその周辺地域における出土瓦資料のデータ収集をおもな作業として行った。とくに昨年度の報告において触れた中国地方の事例については、再三現地を訪れることによって周辺遺跡の出土瓦データを細かく採集し、論としてまとめることができた。資料の一部に未発表資料を含むため本年度は公表を差し控えたが、来年度に論文として発表できる予定である。論文としては、昨年度報告時には掲載予定段階であった「造瓦組織の復原と瓦当文-東海地方の国分寺から-」(『史林』86-3,2003)が、本年度5月に刊行をみた。 また、その他の地域においても積極的に資料収集を進め、関東や近畿の一部を除くすべての地方の資料収集が終了した。 さらに本年度の成果としては、該当期の地方造瓦組織とは別に、周辺事例についての論考を著したことである。昨年度は造瓦組織と金属生産の相違について論じたが、本年度においては、「京都大学所蔵の西寺採集瓦について」(『古代文化』55-9,2003)において、平安期における九州産瓦の中央への搬入体制を、おもに供給者側から論じ、また「13世紀における「中央官衙系」瓦工の編成と展開-京都大学医学部構内AO18区の資料から-」(『京都大学構内遺跡調査研究年報1999年度』,2003)においては、かつて平安京の瓦生産を担っていた瓦工の、中世以降の展開についての一例を、特定遺跡の事例から分析した。このように、研究課題当該期とは異なる時期の生産組織論を扱うことは、今後当該期の状況を復原していくことへの一助となろう。
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