研究概要 |
本年度は各地の木簡資料に関する膨大な基礎的文献(発掘調査報告書、書籍)の蓄積と実物資料の実見作業を中心に研究活動を展開した。必要機材を購入と、新出の資料の公開、現地調査、学会参加と其処での情報交換を積極的に行った。 【現地調査】 現地環境調査を合計9ヶ所及び、資料の実見による研究調査をのべ10ヶ所において行った。調査地は城柵官衙関連遺跡を解明する基礎作業として、古代律令制下における国内の中心であった平城京、長岡京や、木簡が多く検出され東北地方と比較・検討材料となる関東・北陸地域の遺跡の調査を行った。大きな成果として岩手県陸前高田市小泉遺跡出土の出土文字資料調査が成果としてあげられる。これまで不明であった太平洋側の9世紀代における律令官衙遺跡の状況が解明上非常に重要な資料で、蝦夷、城柵、律令制浸透過程の研究とその寄与するところは非常に大きい。次年度も継続して調査・研究すると共に、その成果は2004年夏予定の現地でのシンポジウムにおいて、一般、研究者双方に発表の予定である((仮題)『海道の蝦夷の世界』8月15,16日開催予定)。なお、当遺跡は木簡の出土は認められないが今後出土の可能性がある。なお、各地調査の過程において、木簡に密接に関連する資料として来年度から墨書土器資料を発展的に導入することを見通しとして立てている。 【新しい研究視点の開発】 資料の調査、研究のなかで、新たな研究視点を発見した。木簡資料上の墨書部分が発掘調査後消滅しているという事実である。その背景にある複合的な要因について、保存化学分野の北海道東北保存科学研究会で発表し、合わせて他分野との連携研究の可能性も提示する結果となった。 ※以上の成果をふまえ、来年度は本格的に東北地方(特に宮城県、秋田県、岩手県、福島県)の城柵官衙遺跡の調査を進めることとしたい。
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