研究概要 |
今年度の活動は,対象となる青銅器資料の調査,鋳造技術の習得を目的とした。資料の調査については,これまでの研究で作成したデータから技術的側面に関する条項を抽出・整理した,特に青銅器製作技術に関して重要な画期となった土製鋳型の導入に焦点をしぼって,多鈕鏡や異形有文青銅器のデータを再整理した。それらのうちとりわけ製作技術を探るために特徴的な痕跡を残す円形有文青銅器を復元実験のモデルに設定した。今年度は円形有文青銅器の資料調査を果たせず,実見することが適わなかった。また夏期には朝鮮半島青銅器文化との関連が深いロシア沿海州へ資料調査に赴き,銅釦などの複雑な形状をもつ青銅器が石製鋳型で製作されていたことを確認した。摘みの存在等から安易に土製と判断してきた基本認識を改める必要を認めるとともに石製・土製各鋳型による製品が示す特徴を実験を通じて整理する必要性が再認識された。鋳造実験は,円形有文青銅器をモデルとし,造形用ワックスを用いて原型を製作する方法を選択した。原型を3種類の真土でつつみ,3つの鋳型を作成した。自作の溶解炉を構築し鋳造をおこなったが,鋳型のつくりが稚拙であったことと,鋳型素材への理解が不足していたことで,意図した通りの製品を得ることができず,もっとも関心をもっていた微細な文様を鋳出すための凸面が剥離する現象を考察するにはいたらず次回実験の課題となった。
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