研究概要 |
今年度の調査概要 港川フィッシャー遺跡(沖縄島),ピンザーブ洞穴遺跡(宮古島)から産出した更新世動物化石について,沖縄県立博物館において博物館調査を実施した.調査期間はのべ16日間である.また比較資料として,波照間島大泊浜貝塚から出土したグスク時代のリュウキュウイノシシ資料の分析を東亜大学において実施した. 沖縄県立博物館所蔵資料に関しては,資料数の多いピンザーブ洞穴遺跡から産出した,ミヤコノロジカ資料の分析に重点をおき,上腕骨,大腿骨の破砕パターンの分類,骨表面の損傷の観察を実施した.また骨表面の損傷については,人為的な解体痕跡を疑わせる傷をシリコン印象材をもちいてレプリカ作成し,東亜大学において走査型電子顕微鏡で検鏡した。今年度の調査により,ピンザーブ洞穴遺跡資料の中核を占めるミヤコノロジカの主要四肢骨標本の調査を終了した. これまでの成果 今年度の調査により以下の点が明らかになった. (1)ピンザーブ洞穴から出土したミヤコノロジカの四肢骨資料は,残存状態が極めて良好で,完存する標本の比率が高い(80%以上).比較資料として用いた大泊浜貝塚資料では対照的に,人為的な解体行動に由来する破片資料が多数観察された. (2)骨表面に観察された傷を検鏡した結果,人為的な解体行動に特徴的な切創は確認されなかった.しかし,港川フィッシャー遺跡から出土したリュウキュウイノシシの肩甲骨は破片に,ハンマーによる打撃を疑わせる痕跡が観察された.
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