今年度の調査概要 ピンザーブ洞穴遺跡(宮古島)から産出したミヤコノロジカ化石の分析を沖縄県立博物館において継続実施した。調査期間はのべ9日間である。また、新たに比較資料としてシリア・デデリエ洞窟から出土したガゼル化石の分析を東亜大学において実施した。 昨年度の調査からピンザーブ洞穴産ノロジカに人為的な食料残滓として堆積したものがほとんど含まれていないことが予想されたが、確認のため、部位同定がなされないまま博物館に収蔵されていた破片資料(400点)を追加して精査した。この精査によっても人為的な解体痕跡は検出されず、ミヤコノロジカ資料が自然要因によって堆積した可能性が最も高いことが明らかとなった。 しかし、更新世人類を含む化石群の堆積過程については、なお不明なままである。そこで、ピンザーブ洞穴における化石資料の形成過程をより具体的に推定するために、資料の中核をなすノロジカの生存曲線と骨格部位ごとの出現頻度の偏りについて検討を加えることとし、(1)歯牙の萌出・咬耗状態を分類し、(2)骨格部位ごとに最小個体数を算定した。 今年度の成果 今年度の調査から、以下の2点が明らかになった。 (1)歯牙の萌出・咬耗段階から推定されるミヤコノロジカ化石資料の年齢構成は、幼獣と老成獣が主体をなし、U-shapeと呼ばれるパターンを示す。 (2)各骨格部位の出現頻度には偏りがみられ、骨の構造密度と相関している傾向が認められる。
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