本年度は、奈良文化財研究所蔵の出版されている発掘調査報告書より基礎資料の収集を進めた。この資料の作成とあわせて、主に西日本を中心とした6世紀後半〜9世紀に至る金属器模倣形態をもつ土師器、須恵器を中心に、実際の資料を見学し、土器の形状模倣の実態について検討を進めることができた。 中でも、山陰地方における当該期の土師器生産は、官衙及び寺院の周辺で宮都の土器を模倣して製作された土器がまず現われ、それが徐々に地域の土器の影響を受けて変容しながら定着していく過程を想定することができることが明らかになりつつある。このことから、土器の形状の模倣が各地域において一律に開始されるのではなく、宮都で生活をおこなった国司、郡司層の地方行政機関への移動を契機としておきたものであったと考えるべきであることがわかった。 実資料による製作技法の検討からはこれらの土器は既存の各地域の製作技法をもとにして製作されており、器形の類似が達成されているに留まり、新しい技法による変化ではなかったことも想定することができるであろう。これについては、土器を属性分類し、多量の資料の分析を通じてその変化の過程を検討する必要があり、現在、その分析の視点について検討を進めている。 金属器模倣形態の土器の日本全国への転換は、これらの実態を捉えた上で、いくつかのモデル化をおこなうことが可能となるであろう。これを達成し、各地の土器の模倣のあり方を展望する方法を模索したい。 この想定を実際に証明し、モデル化を進めていく為に、来年度は更なる資料の収集と体系化、及び実資料の見学を通じて更に検討を進めたい。
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