3カ年にわたる本研究課題の初年度は、下記の調査を行った。 第1に、諸本の収集作業として、天理大学附属天理図書館を中心に、原典を調査した。調査対象資料は『倭玉篇』諸本のうち、『第四類本』と『古活字版』の諸本を中心として、書誌の調査を進めた。又、京都大学図書館蔵本の『倭玉篇』も『第四類本』に属するものである事が明らかとなった。 第2に、諸本の原本調査の方法は、日本大学総合学術情報センター所蔵資料調査の調査カードによる方法を応用した。もとのカードは古典文学作品の調査に対応させた方法であったので、本調査では、漢籍の性格を併せ持っ『倭玉篇』の書誌調査に対応させるべく改良を加えて使用した。 第3に、諸本の内容研究は、『古活字版』諸本の先学による三分類の再検討を中心に進めた。これは、既に先行研究により関連性が明らかにされている漢籍の『龍龕手鑑』や『倭玉篇』の一種である『篇目次第』との対照を通して考察を加えた。その結果、先行研究では『古活字版』諸本を前後関係の順に示すと一行の掲出字が五段組となっているものを『第一種本(イ)版』と『第一種本(ロ)版』、一行が四段組となっているものを『第二種本』として把握していたのであるが、全く逆の前後関係で捉える事が妥当である事が明らかとなった。その考察結果について、現在学術雑誌への投稿準備中である。又、『第四類本』の諸本に就いて、先学による分類の再検討を現在進めている。
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