本年度は次の研究を行った。 第一に、昨年度調査を進めた『古活字版倭玉篇』諸本調査結果から、『古活字版』の部首排列を、漢籍『龍龕手鑑』の部首排列と対照し、又、掲出字排列や字注の内容を『篇目次第』と対照し、『古活字版』諸本の系譜を明らかにした。この『龍龕手鑑』・『篇目次第』との対照により導き出された結論としての『古活字版』諸本の系譜は、従来指摘されていたものとは正反対のものであり、本補助金による諸本調査によって初めて明らかとなった重要なものだと考えている。 第二に、現存最古の『延徳本倭玉篇』に就いて、その掲出字排列は従来指摘よりされている『大広益会玉篇』の中でも、内閣文庫蔵『十二行本』に依拠している事、字注は殆どを『音訓篇立』・『第四類本』に依拠している事、巻末に排列されている独自の九部首のうち、典拠不明とされていた「曽」部は、掲出字排列と字注の点で『第四類本倭玉篇』と関連性が見られる事を明らかにした。本補助金による原本調査や諸本の紙焼収集によって、従来の研究結果より、更に解明出来た点が多いと言える。 第三に、流布本と考えられている『第四類本』に就いて、各種特殊文庫等に於いて原本調査を行った。その結果は、現在整理し、発表の準備を進めている。 第四に、『倭玉篇』と関連性の指摘されている漢籍『大広益会玉篇』・『龍龕手鑑』に就いて、各種特殊文庫等に於いて原本調査を行った。この結果は、上記『倭玉篇』諸本の研究上での基礎情報として有効に機能している。
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