新聞については、全国紙で発行部数の上位1位と2位を占める『読売新聞』と『朝日新聞』を中心とする実際の紙面を対象として、そこで使われている異体字を探索した上で、各紙における用例として抽出した。また、それらを元に、新聞社間の字体の差異をリスト化した結果、表外字に関して、『読売新聞』では、3部首以外はおおむねいわゆる康煕字典体を用い、『朝日新聞』はいわゆる拡張新字体を使っているという特徴が顕著に現れたが、それぞれに新聞の面や執筆者、表記される語などによって例外があることが確認された。また、同じ全国紙とされる新聞でも、電子化資料と紙面とで字体が異なるケースを多数確認した。これらの内容に関しては、国立国語研究所主催の「ことば」フォーラムで発表したほか、『国立国語研究所プロジェクト選書』2において成果を広く公表する運びとなった。 また、地名資料については、各地の役所・役場の市民課などで利用されている日本加除出版刊行の『日本行政区画便覧』や国土地理院発行の「二万五千分一地形図」などのほか、各自治体で作成・管理している「公図」や肉筆の「土地台帳」を含めた各種の資料を用い、そこで使われている異体字を探索した。その上で、諸々の異体字を用例として抜き出し、作成媒体・作成者間の差異を確認した。それらを元に、各字の字体レベルの使用実態に関する種々の調査を実施し、日本列島の随所で地名を表記するために使われている漢字には、異体字が現在もなお数多く存在していることを確認し、その背景や歴史についても考察した。それらの成果は、下記の雑誌論文のほか、マスメディアでも公表した。
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