芸道としての法華経読誦、すなわち「読経道」がいかなる体系を持ち、どのように芸道化していったかを明らかにするために、今年度は、基礎資料の整備と法会の調査とを中心に据え、研究を進めた。 読経道関連資料の収集と分析に関しては、金沢文庫・叡山文庫・真福寺・書写山円教寺・薬師寺など、諸寺諸文庫への聖教調査を行い、資料を撮影または複写し、翻刻した本文および書誌などのデータをパソコンに入力した。諸資料には個別に考察を加え、基礎的な作業を進めた。読経道周辺の資料と目される悉曇関係の聖教(主として真福寺蔵の聖教類)にも調査を加えた。また、後白河院の声明・読経を考察するために重要な三千院の御懺法講など、比叡山を中心に法会の調査を行った。 さらに、読経道の系譜に見える人物達について日記記録類を中心に資料を集め、基礎資料の整備をはかった。特に、書写山周辺の人物(心空・鎮増など)について調査研究を行った。 以上のような基礎的研究を推し進めるとともに、読経道そのものを俯瞰すべく、宗教と芸道とがこのなかでいかに結びついているのかを考究し、お茶の水女子大学人間文化研究科国際日本学シンポジウムにて発表、論文化した。また、これまでに明らかになった研究成果に関しては、一書に纏めるべく作業中である。
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