本年度の研究実績概要 本研究は室町時代の流行歌謡・「小歌」と先行歌謡の「早歌」・「謡曲」を比較分析し、「小歌」の音楽的実際とその性格を明らかにするものである。 本年度における早歌との比較研究については、外村久江・外村南都子著の『早歌全詞集』を底本に、昨年度電子テキストファイル化した歌詞を元に、調査した譜本(楽譜)のゴマ(節博士)の比較対照をするため、画像読み込み・必要部分の切り出しなどの基礎的作業とその分析を行い、『閑吟集』に切り取られた早歌の傾向の分析を深めた。 一方で、早歌の譜本の善本調査の一環として、新出の早歌資料でみる専修大学図書館蔵、旧菊亭文庫本所収の『究百集』を調査・翻刻し、研究代表者の所属している中世歌謡研究会の平成15年度大会において資料紹介をおこなった。この成果は「資料紹介」として会誌『梁塵』第21号に紹介する予定である。 また、謡曲については、引き続き、基礎的作業として、『閑吟集』所収の謡曲の小段構造をあきらかにするため、手附(伴奏)の記載してある謡本(現行観世流のもの)を中心に、囃子の各流派の手附本に対象を広げて、小段構造を分析した。が、かなり広範囲に及び、作業は継続中である。 加えて、早歌における抜書き集、謡曲における小謡集・部分謡集などでうかがえる、一曲全体からの切り出しの傾向を概観するために、各流の小謡集を見ていく必要があり、調査を継続中である。これは『閑吟集』所収の歌謡以外にも『閑吟集』の切り出しの傾向が共通するものなのかどうかを分析するためのものである。
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