本年度の研究実績概要 本研究は室町時代の流行歌謡・「小歌」と先行歌謡の「早歌」・「謡曲」を比較分析し、「小歌」の音楽的実際とその性格を明らかにするものである。 本年度における早歌の譜本の善本調査の成果として、新出の早歌資料である専修大学図書館蔵、旧菊亭文庫本所収の『究百集』を中世文学研究会会誌『梁塵』の第21号に「資料紹介専修大学図書館蔵菊亭文庫本『究百集』」として翻刻・解説を掲載した。編集の都合により、刊行が遅延し、実際には2004年の夏に刊行された。 また、2004年10月に埼玉大学で行われた日本歌謡学会平成十六年度秋季大会において、善本調査の成果として、「早歌享受者考-早歌諸本の伝流をめぐって付四宮長能画像賛報告」と題して研究発表を行った。この発表は東京大学史料編纂所に所蔵されている島津家文書内の早歌集『宴曲集』と『拾菓集』の伝来から、公家における享受者に関して考察したものである。また、早歌の担い手の一人である四宮長能の画像賛は、従来、賛の文章のみが知られ所在不明であったが、写真のみではあるが、これも東大史料編纂所に所蔵されていることを報告した。 また、謡曲については、基礎的作業を継続し、『閑吟集』所収の謡曲の小段構造をあきらかにするため、手附(伴奏)の記載してある謡本(現行観世涛のもの)を中心に、囃子の各流派の手附本に対象を広げて、小段構造を分析した。 また、『閑吟集』所収の歌謡以外にも『閑吟集』の切り出しの傾向が共通するものなのかどうかを分析するために、早歌における抜書き集、謡曲における各流の小謡集を見ていく必要があり、調査を継続中である。
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