研究概要 |
従来紹介されていない元刊本、朝鮮版、五山版を中心に、日本(国会図書館、内閣文庫、東洋文庫、大阪府立図書館石崎文庫)、韓国(ソウル大学奎章閣)、台湾(国家図書館、故宮博物院)において調査、複写を行った。すでに出版、公開されているものは、影印本を優先的に購入、雑誌掲載の出土資料の発掘報告書、美術資料等の収集につとめた。また、研究の一環として京都大学附属図書館の「学びの世界-中国文化と日本-」の企画・立案・選書、図録の解説執筆に協力、附属図書館所蔵の漢籍調査も併せて行った。その結果,モンゴル時代の空前絶後の出版文化の隆盛が、朝鮮、日本に多大な影響を与えたことを「モノ」そのものを通じて、より克明に浮かびあがってきた。同展示会は、二千三百人余りの入場者を得、図録も全冊カラー、最新の学術情報、詳細な解説等によって好評を博した。また、モンゴル時代の儒教文化を理解するうえで重要な根本資料である『廟學典禮』の成立年代、テキスト、作者の比走について考察したほか、科挙再開に際して、モンゴル朝廷が官学の整備、出版システムの整備にいかに力をいれ、全土の均質な儒教文化政策を施したか、当時官僚になるためにいかなる読書、作文の練習のテキストが必要であったか、教養として文、理を問わない博学が要求されていたかを近年公開されつつある新資料、及び、従来看過されてきた史料を使用して考察した。そして、『元典章』『大元通制』といった根本資料についても、新知見を述べた。『丹〓独對』が今後重要資料として検討される余地があることも紹介した。
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