本研究は、現代英国における多文化主義論争と共同性の行方について考察するものである。文学、テレビドラマ、映画、写真、建築等を主たる分析対象としている。本年度は、昨年度収集した多文化主義、文化論争、公共圏をめぐる基本的な文献を読み解き、かつ英国で実施した各種メディア機関、及び街頭でのインタビュー調査等を通して得た一次資料の分析・考察を進めた。 今年度の研究成果の一部として、別紙に記載した通り、各種雑誌を中心に7本の論文を執筆した。同時に文化研究に関する国際学会及び日本英文学会シンポジウムをはじめとし、4回にわたる研究発表を行った。いずれも本研究テーマを遂行する上できわめて貴重な機会であった。 また、今年度の論文、及び発表等を通してさらに深化、発展させる必要があると感じた点については理論的にも実証的にも現在調査を進めている最中である。とくに今年度は、ポピュラー・カルチャーをはじめとしたメディア表象分析、メディア機関とのインタビューをふまえ上で、グローバル化とともに大きく変容する都市空間の問題とあわせて本研究テーマの考察を進めてきたが、9.11以降の現状を鑑みると、監視という視点からさらなる丹念な調査が必要と思われる。報告者は、以上の点をふまえて、来年度、この三年間の成果が凝縮できるようさらなる研究を遂行している最中である。その成果は来年度の日本コミュニケーション学会シンポジウム(6月)、文化研究に関する国際シンポジウム(7月)、および香港で行われる国際比較文学会(8月)をはじめ、多数の場で研究発表を行うことがすでに決定している。
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